イギリスには、映画「ハリー・ポッター」のような荘厳な校舎や伝統ある寮生活を想起させる名門ボーディングスクールが9校存在します。それらは、通称「Great Nine(グレイトナイン)」と呼ばれています。
中世から続く歴史と、現代の教育ニーズを融合させた特別な学びの場として、世界中の学生や保護者から注目を集めています。9校それぞれが持つ個性や教育理念は、「高校留学」を通じて体験できる唯一無二の文化や成長の機会を提供します。加えて、学問だけではなく、国際的なリーダーシップや自己管理能力を育む環境としても高く評価されています。
この記事ではそんな「Great Nine(グレイトナイン)」の魅力を解説していきます。
グレイトナインとは?
グレイトナインは、イギリスの名門ボーディングスクール9校を指す総称で、英国の教育界において特別な地位を占めています。これらの学校は歴史的に深い伝統を持ち、高い学術水準と人格形成に力を入れる教育機関として知られています。多くの世界的なリーダーや著名人を輩出しており、国内外で非常に高い評価を得ています。
ボーディングスクールに関しては、こちらの記事で詳しく解説しております。
グレイトナインの歴史
起源と発展
グレイトナインの起源は、中世イギリスにおける聖職者養成学校に遡ります。当初は主に教会や宗教機関が運営していましたが、16世紀以降、イギリスの教育制度が進化する中で、これらの学校は独立性を強め、現在のパブリックスクールの基盤を築きました。この時期に教育が富裕層や特権階級の子弟に限定されていたことが、後にエリート教育の基盤として機能するきっかけとなりました。
パブリックスクールとしての特徴
18世紀から19世紀にかけて、グレイトナインはエリート層の子弟のための教育機関としての地位を確立しました。この時期に、厳格な規律、クラシックなカリキュラム(特にラテン語やギリシャ語の教育)、そしてスポーツを重視する教育方針が形作られました。これらの学校は、英国社会において文化的、政治的リーダーを育成する機関として重要な役割を果たしました。
グレイトナインの学校一覧と特徴
以下はグレイトナインを構成する9つの学校とその特徴です。
(1)イートン・カレッジ(Eton College)
世界的に有名なパブリックスクールで、英国王室や政治家を多く輩出しています。卒業生には、ウィリアム王子やボリス・ジョンソン、デヴィッド・キャメロンなどがいます。卓越した学術教育とスポーツ活動が特徴であり、生徒のリーダーシップ育成に注力しています。また、オックスフォード大学やケンブリッジ大学への進学率が高いことでも知られています。
(2)ハロウ・スクール(Harrow School)
https://www.harrowschool.org.uk
音楽や演劇活動が盛んで、文化的教育が充実しています。英国元首相ウィンストン・チャーチルのスピーチ能力を育んだ場所としても知られています。ハロウの校歌や独自の伝統行事が学校文化に深く根付いており、生徒たちは誇りを持ってそれを継承しています。
(3)ラグビー・スクール(Rugby School)
https://www.rugbyschool.co.uk/
ラグビーの発祥地として有名で、スポーツ教育に力を入れています。また「トム・ブラウンの学校生活」という古典文学の舞台となったことでも知られています。厳格な寮生活とスポーツを通じた教育が特徴であり、生徒は多方面での活躍を期待されています。
(4)ウィンチェスター・カレッジ(Winchester College)
https://www.winchestercollege.org
学問的な卓越性とクラシックなカリキュラムで知られ、歴史ある教育施設です。ここでは、伝統的なラテン語教育が重視されており、知的探求心を育む独自の教育環境が整っています。
(5)チャーターハウス・スクール(Charterhouse School)
https://www.charterhouse.org.uk
科学教育と課外活動が充実しており、バランスの取れた教育を提供しています。卒業生には、詩人ロバート・グレーヴズがいます。また、近年では科学技術分野における教育の充実が図られています。
(6)ウェストミンスター・スクール(Westminster School)
https://www.westminster.org.uk
ロンドン中心部に位置し、学術面での成果が特に高い学校です。大学進学率が高いことで知られ、卒業生には建築家クリストファー・レンがいます。都市型の教育環境を活かし、多文化的な視点を取り入れた教育が行われています。
(7)マーチャント・テイラーズ・スクール (Merchant Taylors’ School)
商業ギルドに由来する歴史を持ち、1561年に設立された名門校です。卓越した学術成績と幅広い課外活動で知られ、卒業生には法曹界、金融業界、政治界で活躍する人物が多くいます。特に数学や科学分野での教育に強みがあり、生徒の知的好奇心を育む教育方針を貫いています。
(8)セント・ポールズ・スクール (St. Paul’s School)
https://www.stpaulsschool.org.uk
1509年創立の伝統ある名門校で、ロンドン郊外に広大なキャンパスを持っています。学問的成果に重点を置いた教育で知られ、特に人文学や科学分野において抜きん出た成績を誇ります。卒業生には文学や科学の分野で世界的に名を馳せた人物が多く、リーダーシップ教育を通じて次世代を担う人材の育成に力を入れています。
(9)シュルーズベリー・スクール(Shrewsbury School)
創造的な教育とスポーツが特徴で、進化論で知られるチャールズ・ダーウィンもこの学校の出身です。学術的探求心を刺激する教育方針が特徴であり、幅広い分野で卒業生が活躍しています。
グレイトナインとハリー・ポッターの世界
グレイトナインの学校生活は、映画や小説「ハリー・ポッター」のホグワーツ魔法魔術学校と重ねられることがしばしばあります。ホグワーツが寮生活を重視し、生徒たちが学問や冒険を通じて友情を深める場であるのと同様に、グレイトナインの学校も寮制を基盤とした独自の文化を形成しています。
たとえば、イートン・カレッジの壮大な建築や伝統的なユニフォームは、ホグワーツの魔法の雰囲気を思わせます。また、ラグビー・スクールのスポーツ重視の教育方針は、ホグワーツのクィディッチの熱狂に似た学校行事として生徒たちの絆を深めています。
さらに、ハロウ・スクールの演劇プログラムや詩の朗読会は、ハリー・ポッターシリーズで描かれるダンブルドアのような個性豊かな教育者が育む創造的な学びを彷彿とさせます。これらの学校では、生徒たちが魔法こそ使わないものの、未来のリーダーとして成長するための「魔法のような教育環境」が提供されています。

グレイトナインの伝統行事
これらの学校では、年間を通じて多くの伝統的な行事やイベントが行われています。たとえば、イートン・カレッジでは、毎年クリスマスに行われる「キャロルサービス」が地域住民にも開かれ、多くの人々が伝統を分かち合います。また、ハロウ・スクールでは「スピーチデイ」と呼ばれる行事があり、生徒たちが自らの成果を家族や教師に発表する機会を設けています。こうした行事は、生徒たちが学校の伝統に誇りを持ち、学びの中で深い絆を築く機会となっています。
グレイトナインが世界中の保護者に評価される理由
教育理念と学術的卓越性
グレイトナインの学校は、生徒に知識だけでなく、自立心やリーダーシップを養う教育理念を掲げています。学術面では、英国の教育基準を超える高い水準を維持し、オックスフォード大学やケンブリッジ大学への進学率が高いことでも有名です。さらに、教育の質を保証するために経験豊富な教員が配置され、生徒の学力向上を支えています。
人格形成・リーダーシップ育成に寄与する環境
寮生活や多様な課外活動を通じて、生徒は協調性、責任感、そして問題解決能力を養います。これにより、社会のさまざまな分野で活躍するリーダーを輩出しています。教育の現場では、個別指導を重視し、生徒一人ひとりの才能を引き出す取り組みが行われています。たとえば、グローバル社会に対応するためのディベートや異文化交流プログラムも導入されています。
豊かな文化と歴史的環境
グレイトナインの学校が位置するキャンパスは、歴史的建造物や広大な敷地を持ち、生徒に豊かな文化的背景を提供します。これにより、生徒は学問だけでなく、美術や音楽、文学といった多様な分野への理解を深める機会を得られます。また、地域社会や伝統的な行事との関わりを通じて、歴史を感じながら学ぶ環境が整っています。

グレイトナインの教育内容と文化
カリキュラムと課外活動
グレイトナインのカリキュラムは伝統的な科目に加え、現代的な科目も取り入れられています。また、スポーツ、音楽、演劇、ディベートなどの課外活動が充実しており、生徒は多様なスキルを身につけることができます。これにより、幅広い知識と実践的なスキルを兼ね備えた人物が育成されます。特に音楽やスポーツは、個々の才能を伸ばす重要な要素として重視されています。
寄宿制の生活とその意義
寄宿制という環境は、グレイトナインの大きな特徴の一つです。生徒は共同生活を通じて、規律や協調性を学びます。また、教員と生徒の距離が近く、個別指導が行われることも魅力です。寮生活を通じて、生徒たちは家族的な絆を築きながら、自己管理能力を養います。さらに、寮内では定期的に文化活動やイベントが開催され、地域社会とのつながりも深められます。
現代におけるグレイトナインの役割
グレイトナインの学校は、教育の伝統を守りながらも、現代社会のニーズに応えるべく進化を続けています。これまでの卒業生には英国首相をはじめ、さまざまな分野で活躍するリーダーが多く含まれています。また、デジタル教育や多文化共生の取り組みを進め、未来を担う人材の育成に貢献しています。たとえば、オンライン学習ツールの活用や環境教育プログラムの導入を通じて、現代的な教育課題に対応しています。
まとめ
グレイトナインと称される各校は、イギリス教育の象徴として、長い歴史と高い教育水準を誇る名門ボーディングスクールです。それぞれの学校が独自の伝統や教育理念を持ちながらも、共通して学術的卓越性と人格形成に重点を置いた教育を提供しています。教育内容や生活環境を通じて、生徒は学問的な成功にとどまらず、リーダーシップや社会性といった重要なスキルを身につけることができます。その影響力は国内外に広がり、卒業生たちはさまざまな分野で高いパフォーマンスを発揮し、世界規模の影響を与え続けています。そのような環境に身をおいて学習することは、国際的なリーダーへの着実な一歩となるでしょう。